信州地方という言葉はみなさんも聞いたことがあるでしょう。長野県で使われる呼称ですが、具体的にどこを指すのか、行政区分としては存在しないこの名称の範囲と意味は意外と曖昧です。
本記事では信州地方が指す地理的範囲、歴史的な背景、そして呼び名の由来について詳しく解説し、疑問にお答えします。
信州地方はどこにある?地理的範囲と概要
「信州地方」は現代の行政用語ではありませんが、一般的には長野県を中心とした地域を指します。日本のほぼ中央に位置し、海に面さない内陸県・長野県全域がその主要な範囲です。
信州地方は標高の高い山岳地帯に囲まれ、国内でも有数の広さを持つ県として知られています。春夏秋冬の変化が激しい気候で、山岳リゾートや温泉地などが点在します。
長野県全域を指す信州地方
結論から言えば、信州地方は基本的に現在の長野県全体を意味します。古代には「信濃国」として知られた地域の範囲がほぼ長野県と重なることから、県民や観光業界では長野県全域を「信州」と呼ぶ習慣があります。
そのため、長野県内の主要都市(長野市、松本市、諏訪市など)や観光地(上高地、軽井沢、善光寺など)は一様に信州と呼ばれることが一般的です。
信州地方の位置:中部・甲信越地方
信州地方は日本列島の中央部、いわゆる中部地方の中でも甲信越地方に分類されます。中部地方の北西部にあたり、南北に細長い長野県のすそ野が広がっています。
具体的には、北緯約36度付近から南北に長く伸び、東西約124kmの範囲に及びます。標高が高い山々が連なる地形が特徴で、日本アルプス(三山アルプス)などが聳え立ち、「日本の屋根」と呼ばれることもあります。
隣接する県と信州文化圏
信州地方は8つの県と接する全国でも境界が多い地域です。北は新潟県、東には群馬県と埼玉県方面、南に静岡・愛知・岐阜県、そして西側には山梨県・岐阜県、中津川市(岐阜県)などがあります。峠や山脈を越える形で境界が続いており、交通路が要となっています。
これらの隣接県には、信州と気候や文化が連続する地域が多く存在します。例えば、新潟県妙高市や糸魚川市は雪深い気候が長野北部と共通し、山梨県北杜市や清里高原は八ヶ岳を通じて信州とつながっています。歴史的・観光的には隣県も含めた広い意味での「信州圏」が意識されることが少なくありません。
信州地方の歴史と名前の由来

信州地方という名称は、古代に存在した「信濃国」(しなののくに)に由来しています。奈良時代成立の令制国であった信濃国は、現在の長野県をほぼ包含し、江戸時代まで続いた旧国名です。
信濃国が平安末期から鎌倉時代にかけて、「信州」と呼ばれるようになり、長い歴史の中で地域の通称として定着しました。
旧国名「信濃国」から「信州」へ
信濃国は大宝律令(8世紀)の施行により成立し、律令制下の国として1300年以上続きました。当時は広大な地域を指す公式名称でしたが、やがて平安時代末期、中国に留学した僧侶などの影響から「信濃国」の略称として「信州」という名称が使われるようになります。
これは中国で国名に「州」を付ける呼び方が流行したためで、信濃国の「信」を取り「信州」と呼称するようになりました。江戸時代には善光寺や松本の門前町などで「信州」の呼び名が文化圏を表す言葉として定着していきました。
「信州」という呼称の由来
「信州」の「州」は「国」と同じ意味をもち、各地で古い国名の略称に使われていました。例えば甲斐国は「甲州」、武蔵国は「武州」と呼ばれました。同様に信濃国も略して信州となり、響きの良さから次第に定着していったのです。
「信州」の呼称はやがて文献や地図にもみられるようになり、信州そばや信州味噌といった特産品の名にも使われてきました。
信州の呼び名が残る理由
明治の廃藩置県で正式名称としては「長野県」が定められましたが、「信州」という呼び名は地元で愛着をもって使われ続けました。信州の豊かな自然や歴史文化を背景に、観光地名や企業名、学校名などに「信州」が広く用いられ、地域ブランドとしての価値が高まりました。
現在では「長野県」というより「信州」の方が響きが良いと感じる人も多く、「信州そば」「信州大学」「信州ワイン」など、信州の名を冠した名称は全国的にも広く知られています。
信州地方の境界と含まれる地域
信州地方は行政的な県境を厳密に示すものではありませんが、地理的には山岳を中心に長野県内外へ広がっています。長野県内でも南信地方(阿智村・平谷村・南木曽町など)は隣接県(愛知県や岐阜県)と接し、北信地方では戸隠高原が新潟県境に続いています。
このような山岳地形のため、長野県内では山脈が文化圏の境界になりにくく、隣接県との間でも自然や生活文化が共有されることが多々あります。
県境が重なる山岳地帯
長野県には尾根や峠が多く、県境が山頂を越える形で続いています。例えば、諏訪郡境の中央アルプスでは静岡県とも接し、北アルプスの山々は新潟県や富山県に連なる稜線が続きます。八ヶ岳山麓からは山梨県南部への広がりもみられます。
こうした山岳地帯では、地形的には県境が明確でも風景や生活様式は隣り合う地域で似通っており、訪れる人にとっては「同じ山里」「同じ高原」として実感されることが少なくありません。
周辺県に広がる信州の文化
長野県と接する周辺県には、気候や文化が信州地方と続く地域があります。群馬県の嬬恋村や長野原町は信州の高原リゾートと一帯となっており、新潟県妙高市・糸魚川市は北信と気候や雪質が共通しています。また、山梨県北杜市(八ヶ岳周辺)も信州の高原文化を共有し、「八ヶ岳信州」などの観光名も使われます。これらの地域では、行政区分上は他県でも、実際には信州文化圏の一部とみなされる場合があります。
行政境界にとらわれない自然や伝統がつながっているため、地元の人々の感覚では県境よりも古くからの街道や生活圏を基に「信州」の域が広がっているのです。
行政区画とは異なる感覚的境界
以上のように、信州地方は長野県全域を軸としながらも、隣接地域に文化や自然が続く広がりを持っています。行政区分とは別に、住民や観光客の感覚としては山脈・河川・人の往来などで形成される「文化圏」で捉えられており、その範囲はあいまいです。
つまり、信州地方という言葉は長野県全域を大まかに指し示しつつ、周辺の山岳地帯も内包する、歴史と文化によって形作られた地域概念といえます。
信州地方と長野県の違い
しばしば混同される「信州」と「長野県」ですが、実際には用途やニュアンスが異なります。ここでは行政名称と通称での違いと、使われ方の実際について説明します。
行政区画として「長野県」は公文書や法律で正式に使用される名称です。県庁や警察、学校など公的機関は必ず「長野県」を名乗ります。一方、「信州」は歴史的・文化的な通称であり、法的な意味はありません。信州の呼称は地域のアイデンティティや観光ブランドとして生き続けているものです。
| 言葉 | 主な意味する範囲 | 特徴・使われ方 |
|---|---|---|
| 信州 | 長野県全域(+周辺地域も含意) | 観光や地域ブランド名に多用。郷土色が強く、地域の愛称として親しまれている |
| 長野県 | 長野県の正式行政区画 | 公文書や行政手続きで使用。県庁所在地の名称を冠する公式名称 |
| 信濃 | 旧国名(歴史的・文学的呼称) | 古文書、伝統行事名など歴史的文脈で登場するクラシカルな呼び方 |
上表のように、「信州」は観光や土産物で好んで使われる一方、「長野県」は行政上の正式名称です。
観光・ブランド名としての信州
観光ガイドや地域PRでは「信州」が頻繁に登場します。「信州上田」「信州安曇野」など、観光地名に「信州」を冠する例が増えています。これは「信州」という言葉が自然豊かで歴史深いイメージを持ち、商品の魅力を高める効果があるからです。
実際、旅行パンフレットやお土産には「信州〇〇」が多用され、訪れる人々に高原リゾートや温泉のイメージを喚起させています。
地域による呼称の好み
地元住民の間でも、「信州」と「長野県」の使い分けには傾向があります。長野市周辺など北信地域では「長野」という表現に馴染みが深く、県名としての長野市の名をそのまま使うことが多いです。これに対し、松本市や飯田市など中南信地域では「信州」という呼び方が好まれます。
これは「長野」と言うと長野市を想起しやすいため、県全体を指す際に他地域の人は「信州」を使う傾向があるからです。いずれにせよ、日常会話や案内では「信州」が親しみやすい名称となっています。
信州地方の魅力と特徴
信州地方は南北に長い地形と豊富な山岳資源により、四季折々の自然景観が楽しめることが最大の魅力です。春は山菜や花を楽しむ野山、夏は高原リゾートや湖畔の避暑地、秋は山々の紅葉、冬はスキーや温泉を満喫できる雪景色が広がります。
こうした自然条件はアウトドアレジャーや温泉観光と相性が良く、日本アルプス周辺では登山や渓流釣りも盛んです。また農産物にも恵まれ、りんごやそば、大豆作物など信州ならではの特産品が数多くあります。
四季折々の自然と風景
信州の山岳地帯には上高地、乗鞍高原、志賀高原、八ヶ岳など数多くの国立公園や自然公園があります。春の雪解け水で清流が勢いよく流れ、夏には高山植物が咲き乱れます。秋には千曲川沿いや阿智村の紅葉など、紅葉狩りスポットが各地区に点在し、冬は白銀となった山脈でスキーやスノーボードが盛んです。
このように信州は場所によって異なる自然の風景が広がり、季節ごとに変化に富んだアウトドア体験が楽しめる点が特徴です。
郷土料理や特産品
信州地方の名産品は山と水に恵まれた背景を反映しています。主なものには以下が挙げられます。
- そば(信州そば):そば粉を使った郷土料理。信州各地にそば畑が広がり、食文化として根付いている。
- 野沢菜・おやき:長野名物の漬物と焼き物料理。保存食として古くから親しまれ、今でもお土産として人気。
- りんごやぶどう:冷涼な気候を活かした果樹栽培。生鮮野菜、果物だけでなく、ワインやジュースにも加工される。
- 味噌・漬物類:自家製味噌や漬物文化にも特色があり、信州味噌は全国的に有名。
これらの特産品は地元はもちろん観光客にも人気で、お土産品として定番となっています。
観光スポットと温泉地
歴史的名所から自然景観まで、観光スポットが豊富です。善光寺(長野市)、松本城(松本市)、松代城跡、諏訪大社など文化的観光地が各地にあります。加えて、野天風呂や峡谷が楽しめる温泉も各地に点在します。
例えば北信地域の野沢温泉・志賀高原温泉、東信の別所温泉・湯田中温泉、中央高原の蓼科・八ヶ岳高原温泉、南信の諏訪湖畔温泉・駒ヶ根高原温泉など四季折々に趣が異なる温泉地があり、訪問者を癒しています。
まとめ
信州地方とは、現在の長野県を中心とした内陸山岳地域を指す言葉で、もとは古代の信濃国に由来する歴史名です。行政上の県名は長野県ですが、「信州」という名称は自然豊かな地域のイメージと誇りを表す愛称として定着しています。
周囲の県境を越えて自然や文化が連続することで信州文化圏が形成され、その結果として歴史・観光・特産品など幅広い分野で「信州」の名が使われています。信州地方という言葉は、長野県全体の魅力とアイデンティティを象徴する包括的な呼び名と言えるでしょう。
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